プロと個人の違いは、生の為替フローの情報に触れられるかどうか

プロと個人投資家の取引における大きな違いの一つは、生の為替フローの情報に触れられるかどうかです。そこで、プロが行っている為替フローに着眼した取引手法を紹介します。

これは一参考事例であるものの、実際に取引された事実にもとづいて少しアレンジしたものです。あくまでもプロの行動を理解するということを主眼において一読してください。

プロが行っている為替フローに着眼した取引手法

ある1日のドル/円の30分足チャートと、その前日を入れた2日間の1時間足のチャートです。X軸(横軸)はニューヨーク時間を表示してあります。

図1:ドル/円の30分足チャート

ニューヨーク時間午後(東京時間翌日の1:00~10:00頃)

1ドル=109.13円~109.56円の狭いレンジ取引※1が続いていました。

1ドル=109円~109.10円には、海外ヘッジファンドマネージャーたちのドル買い指値注文が10億ドル以上あるとの噂がありました。その日の海外市場では、1ドル=109.10円を一度も割らずに、シドニー市場から東京市場へ移行しようとしていました。


※1レンジ取引:一定期間内に一定の値幅の中で上下に繰り返し動く相場(レンジ相場)での取引。ボックス取引(ボックス相場)とも言う。

ニューヨーク時間16:30(東京時間6:30AM)

日本の機関投資家(年金運用)が、1ドル=109.10円以下で5億ドル買いたいという連絡がある銀行に入ります。

銀行のディーラーは、その注文を受ける際に、海外ヘッジファンドマネージャーが109.00~109.10に10億ドル以上の買い指値注文置いているという噂を伝えたところ、年金運用は1ドル=109円近辺ではなく、その少し上値である1ドル=109.10円丁度に5億ドル買いの指値注文を入れてきました。

ニューヨーク時間17:00(東京時間7:00AM))

ドル/円は1ドル=109.20円を割れて下落する段階となりました。

すかさずその銀行のディーラーは、1ドル=109.15円~109.20円で、2億ドルのドル買い(平均買値は1ドル=109.17円)を実施しました(図1、①)。

年金運用による「1ドル=109.10円での5億ドル買い注文」という為替フローの動きと、「1ドル=109円~109.10円の間に10億ドル以上の莫大な海外勢の買い注文があるという噂」から、1ドル=109円以下には落ちないだろうと読んだのです。

前日から1ドル=109円を割れたのは一度だけで、それも長い下ヒゲ(図2、④)となっており、そのチャートを見れば、海外勢が1ドル=109円近辺に大量の買い注文を残しているのもうなずける展開です。

図2:ドル/円の1時間足チャート

銀行ディーラーは、自分が持っているポジションを損切りする場合(売る場合)は、年金運用の買い注文である5億ドルと相殺すると決めました。

つまり、損切りレートを1ドル=109.10円とし、年金運用の買い注文3億ドル分が1ドル=109.10円で、市場で取引されれば、残りの2億ドル(年金運用の買い)と自分のポジション2億ドル(ロスカットの売り)を相殺して注文を成立させるという戦略です。

これも年金運用の5億ドルという大規模な指値があるからこそ、一度の下値トライではそう簡単に109.10円を割り込まないと銀行ディーラーは想定した戦略です。

もし、銀行ディーラーの注文が損切りとなった場合の損失は、

 2億ドル×(109.17円-109.10円)=1400万円

の損失となります。

その後、為替レートは1ドル=109.10円を触ることなく、ディーラーによる2億ドルという大きな買いにつられ、上昇展開となりました。利食いは、その日(ニューヨーク時間)の高値である1ドル=109.555円の少し手前、1ドル=109.50円で保有ポジションの半分の1億ドルを売りました(図1, ②)。

これで確定収益は、

 1億ドル×(109.50円-109.17円)=3300万円

となります。

残り1億ドルのポジションの利食いは、前日(ニューヨーク時間)の高値圏(高値は1ドル=109.875円)の1ドル=109.85円(図2, ③)と決めて、その後の相場展開を見ていく方針としました。

残存ポジション1億ドルの損切りは、1ドル=109.10円の年金運用の買い注文と相殺する方針は変えません。ただし、年金運用の買い注文が4億ドルすべて市場で取引されたら、自動的にその1億ドルを損切りにして、相殺することにします。

その後の相場展開による収益はどうなるでしょうか。もし1億ドルの利食いが1ドル=109.85円で取引されたら、確定収益は

 1億ドル×(109.85円-109.17円)=6800万円

この場合の総合収支は、

 3300万円+6800万円=1億100万円

となります。

もし、109.85の利食いができずに1億ドルの損切りが先に取引されれば、損失は

 1億ドル×(109.17円-109.10円)=-700万円。

総合収支は、

 3300万円-700万円=2600万円です。

これはまさしく顧客の生の取引とグローバルな情報を駆使した、いわゆる為替の取引フローを利用した取引事例です(個人投資家は入手できない情報)。


プロは生の為替取引や顧客の指値、逆指値注文をうまく利用して収益確保に努めている

いずれも日本と海外の機関投資家の大きな注文を利用したため、最初から2億ドルという大きなポジションを取ることができましたから、ポジションを上乗せしなくても、当初の取引ポジションだけで大きな収益が見込める展開です。

今回、銀行ディーラーの損切りは、年金運用の指値注文と相殺できるという、損失限定が約束された状況でした。また、顧客の3億ドルの買いがすべてつくまで、自己ポジションの損切りと相殺する必要はないことは大きな利点です。

なぜなら、109.10円をタッチして1億ドルだけ取引されたあと、1ドル=109.10円水準は堅いと市場が判断し、レートが戻って上昇していくケースはよくあります。

この場合は、年金運用の買い注文である1ドル=109.10円が実際に市場で1億ドル約定した実績があっても、この銀行ディーラーはポジションを損切りする必要はありません。

顧客の年金運用には「5億ドルのうち1億ドルだけ約定しました。残りの4億ドルを引き続き1ドル=109.10円買いで見ておきます」と連絡することになります。

逆に顧客の注文がなく、相殺での損切りができない通常の市場で、2億ドルを1ドル=109.10円で損切り注文を置くと、現在のドル/円市場の取引流動性を勘案すれば、損切りレートは平均1ドル=109.05円程度となる可能性が高くなります。

場合によっては、もっと悪いレートで成立するかもしれません。顧客の買い注文がある場合とない場合では、5pips※1以上差がつくことになります。

つまり、顧客の買い注文があったからこそ、それ以下の円高水準での損切りを免れることができたのです。さらにいえば、もし予測が当たって、レートが反転上昇して2億ドルすべてうまく利食えたあとに、レートが再度下落して、年金運用の1ドル=109.10円で5億ドル買い注文が引き続き残してあれば、同じような取引をもう一度トライできるのです。


※1 pips : 為替の最小単位。ドル/円の場合、1pipは1銭、ユーロ/米ドルの場合、1pipは100分の1セントを意味する。


取引スタイルにマッチしたチャート分析を複数用意することが収益確保に

上で紹介した取引事例は、テクニカル分析から求めた重要なチャートポイントを利用することなく、顧客のフローと前日からの値動き(高値や安値、これもテクニカル分析に入ります)だけを利用して取引した例です。ここが生の為替フローが見えない個人投資家とはまったく違う取引手法です。これは個人投資家にはできません。

しかし、個人投資家はこのようなプロの取引事例から、いわゆる一個人の取引金額は多勢に無勢であること、相場は世界中の参加者がいろいろな思惑で取引し、その結果で動いていること、プロも取引の参入や利食い、損切りのポイントとして、少なからずチャートを利用していることを理解していただくことが重要です。

そして、個人投資家はプロが入手できる生の為替フローの代替として、自分の取引スタイル(デイトレード、スウィングトレード、中長期トレードの別等)にマッチした多種多様のチャート分析を駆使することにより、生の為替フローは入手できなくても、それらのチャート分析が生の為替フローを加味した予測を明示してくれます。

一般的に単体のFX会社のチャート分析だけでは個人投資家がFXと対峙して安定的に収益を計上するにはチャート分析ツールが少なすぎます。

個人投資家はプロと違い、一般的にファンダメンタルズ分析には疎い方々が多く補助的に利用している場合が散見できる程度です。ほとんどの個人投資家は取引参入時や利益確定・損切りをチャートに頼っているのが現状です。

よって、世界中で個人・法人で一番使用されているFXプラットフォーム「メタトレーダー(MT4)」のようにオリジナルチャート分析(30種以上)が豊富にあるものや個人投資家向け著名講師のオリジナルインディケーター(チャート分析)が複数搭載されているようなFXプラットフォームを活用し、その中から自分の取引スタイルにマッチしたチャート分析を複数駆使してFX取引をすることが肝要です。

取引されたすべての生の為替フローは必ずチャートとして残ります。よって、複数のチャート分析を駆使すればプロにしか見えない生の為替フローもそのチャートが予測してくれます。

自分の取引スタイルにマッチしたチャート分析を複数用意することが安定的な収益確保に繋がります。

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鶴 泰治

株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

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