為替情報で聞く「オプション(取引)」とは?

為替情報ではよく、「今日は112.00-113.00円の間の上下にかなりオプションがあるのでレンジ膠着取引となるだろう」とか「112.80円に本日行使期限のオプションが10億ドルあるので上抜けはむずかしいだろう」という話を目にします。

FX取引をしている個人投資家にとって、為替オプション(通貨オプションともいう)は馴染みのない取引であるものの、FX情報や目先の予測では頻繁にでてくる用語であり、オプション取引の実態をおさえておくことはご自分のFX取引において安定的な収益を確保するうえでも非常に重要で避けられない項目のひとつです。

また、オプション取引に関する書籍もたくさん世の中にありますが個人投資家にとってはどれも難解なものが多く、FXの実践に即したわかりやすい書籍がないのも事実です。ここではこのオプション取引についてできるだけわかりやすく解説します。

為替3大取引の1つ「オプション取引」

オプション取引は主にプロディーラーが活発に取引している為替取引のひとつで、スポット取引(通常のFX取引に該当)、スワップ取引(フォワード取引)と並ぶ為替3大取引のひとつです。

グローバルの投機筋がレバレッジをかけて取引するシカゴIMMといわれる為替先物取引よりも取引ボリュームは圧倒的に多くなります。

オプション取引とは「特定の期日(行使期日)を迎えたときに一定の為替レート(行使価格)で通貨を売買する権利を取引すること」です。

これでは何のことかさっぱりわからないと思いますが行使期日を迎えるオプションでまとまった金額のものが当日あると「そのオプションの行使価格(オプション為替レートでストライクプライスといいます。

たとえば上記の112.80円)近辺において一定の狭いレンジ取引に留まりやすい」という認識を持ってください。これだけ覚えておくだけでもオプション取引とは?の回答となります。

バニラオプションとバリア系オプション

オプションは大きくわけて普通のオプション(バニラオプションといいます)とバリア系オプション(オプションの権利が喪失してしまうもの)に分かれます。

一般的に為替情報として市場に配信されているオプションはバニラオプションです。マーケットに対するインパクトとしてはバリア系オプションの方が圧倒的に大きいものの基本的にその情報はプロの銀行ディーラーにしか分からないものであり、個人投資家にはなかなか情報取得は困難です。

また、一般的にも情報開示されてないケースがほとんどです。バリア系オプションはトレンドが出てチャートポイントを次々と超えていき、久々に新値トライするような市場展開のときに伝わってくるケースが多いため、あまり馴染みもなく、ここでは一般的なバニラオプションについて記述します。

オプション取引を理解して、市場に惑わされてないように

オプション取引は輸出入企業、商社、年金などの機関投資家、外資系ファンドなどプロが銀行を通じてまた銀行ディーラー間で日々活発に取引されています。

期間は短いオーバーナイト(翌日)物から1週間、1ヶ月、3ヶ月、1年、それ以上とありますが個人投資家にとってマーケットインパクトがあるものはその期日にだけ注目すれば大丈夫です。

プロ間の取引時点では個人投資家にとってのマーケットインパクトはほとんどありませんので(通常のスポット取引と同等になる)無視して結構です。

オプション期日のことを行使期日といいますので行使期日にどの水準の権利行使価格(ストライクプライス。為替レートのことで上述の112.80円)のオプションがどのくらいあるかがマーケットインパクトの焦点となります。行使期日のオプションは行使価格(上述の112.80円)を挟んで0か100かになります。

例えば、上記図のように現在の為替レートが112.50円近辺としてオプション期日に112.80円のオプションが10億ドルあるとすれば、権利行使時間である東京時間15時(東京カット)または東京時間23時(NYカット)に為替水準が112.80円を超えていると10億ドルのドル買い持ちポジション(ドルロング)が急に発生することになります。

逆に行使時間に112.80円に達してなければ何も発生しません。
なお、権利行使時間(東京カットまたはNYカット)は、取引時点で予め決められています。

もし行使時間に112.80円を超えていたとすると、オプションホルダー(オプションを持っている側)はノーリスクで10億ドルを売ることができます。

上図のように東京カット(15時)オプションでその時点の為替水準が112.90円の場合、オプションホルダーは112.80円のドルロングポジションを10億ドル、15時時点で自動的に保有することになり、その時点の市場レート112.90円で10億ドル全部市場で売却すれば瞬時に1億円儲かることになります。

もちろん、通常の場合、その112.80円オプション10億ドルは複数のオプションホルダーの合計値になっている場合が一般的なので一度に112.90円で10億ドルの売り玉がでるとは限りません。

どのタイミングで売るかはオプションホルダーの裁量次第なので市場のアップトレンドが強いと判断するプロは一部だけ売却して利益を確定し、そのまま残りのドルロングポジションをキープするプロもいるかもしれません。

ただ、ほとんどの場合、行使時間に行使価格112.80円を超えていれば10億ドルの売りが出てくるのが一般的です。

その場合、大量の売り注文が発生するため、市場アップトレンドに対し下方修正するようなマーケットインパクトになります。オプションのボリュームが大きければ大きいほどマーケットインパクトも大きくなります。

カット時間前に予め売る戦略もある

オプションホルダーによっては行使時間前に112.80円以上にマーケットが推移したら(たとえば14時時点で112.90円近辺の水準となったら)自分のホルダー分(112.80円で2億ドル持っていると仮定)の2億ドルを112.90円で先にドル売りするオプションディーラーも多々います。

この場合、15時の行使期限まで112.80円以上で市場が推移すれば15時時点で自動的に2億ドルのドルロングポジションが手に入るので112.90円―112.80円=2千万円の利益が確定されます。

ただ、この取引は、15時時点で仮に112.90以上の円安地合となっていればアップサイドの利益を失うことにもなります。

仮に15時時点の市場レートが112.80未満で推移していれば、112.80円のロングポジションは発生しませんが15時時点の112.80未満の為替レートで2億ドル買い戻せばいいだけなので利益は確定できます。

また、同じような取引をするオプションホルダーが他にもいて112.90近辺で売り圧力が強まると、15時前に112.80円を割れて市場が推移すれば(例えば14時半の時点の市場レートが112.70円と仮定)、14時に2億ドル112.90円でドルを売ったオプションホルダーは14時半に112.70円でドルを買い戻し112.90円―112.70円=4千万円の利益を行使時間前に確定することができます。

そして、また15時の行使時間に向けポジション0でマーケットに立ち向かいます。

オプションセラー(オプションを売った側)のリスク例

一方、オプションホルダーと取引した相対側(オプションを売った側:オプションセラーといいます)はこの時どのような行動にでるでしょうか?

オプションセラー(権利行使される側)は通常デルタヘッジといってボリュームの約半分はリスクのない状態で行使期日を迎えます。取引してから行使期日まで市場レートが行使価格(ここでは112.80円)の上にいっても下にいっても基本は動かないで行使期日を迎えます。

よって、その間のマーケットインパクトはありません。当日、オプションセラーは行使価格112.80円に近づけば残り半分のリスク、5億ドル(上述であれば10億ドルx1/2=5億ドル)を112.80円でオプションホルダーに渡さなければいけないリスクが発生します。

15時時点で112.80円を超えていなければリスクは発生しませんが(0%)、もし超えていれば112.80円で5億ドルのドル売りポジションが自動的にオプションセラー側に計上されます。

例えば15時時点で市場レートが112.90円であれば5億ドル(112.80円−112.90円=-5千万円)、オプションセラー全員で5千万円のロスが発生することになります。

オプションセラーはこのリスクを回避するために15時(カット時間)時点で行使価格112.80円を超えそうであると予測すれば、当日15時(カット時間)前の時点で112.80円以下の市場レートで5億ドル以上のドル買いをして行使時間に備えるような動きをします。

ただ、オプションセラーの場合は15時時点で必ずしも112.80円を超えているとは限らないので15時(カット時間)前に買ったドルロングポジションに対して市場が予測とは逆に下方に行った場合に備え、ロスカットオーダーを入れているのが実情です。

よって、その日のマーケット動向にもよりますが、オプションセラーがヘッジのためのドル買いをする場合は15時の行使時間近くで動き出すケースがほとんどです。

オプションセラーは敢えて行使価格を示現させるように自分のリスクポジションよりも多めにドルを買い増してマーケットを持ち上げようとする動きに出ることがよくあります。

15時前に行使価格を超えそうな動きに市場がなれば、他のオプションセラーも同じような動きをするため市場レートの持ち上がりに拍車がかかることになります。


オプションセラーのリスクを回避する戦略の例

例えば15時前に市場レートが112.75円だった場合、自分のリスクポジションが2億ドルとして、3億ドルのドル買いを実行し、15時時点で市場レートが112.85円となれば、2億ドル分はオプションホルダーに自動的に112.80円で渡し、残りの1億ドルを112.85円で売るような取引を実施します。

この場合、オプションセラーは2億ドル:112.80円―112.75円=1千万円、1億ドル:112.85円―112.75円=1千万円、合計2千万円の利益をこの行使価格跨ぎの取引で計上することが可能です。

このようにボリュームの大きなオプション行使価格が行使期日にあるとオプションディーラーがその行使価格近辺でオプションボリュームよりも多額な売り買いをオプション行使時間前後で繰り返しますのでマーケット自体はそのオプション行使価格近辺で膠着レンジ相場となりやすくなるのです。

だからといって、個人投資家がプロディーラーの真似をしてオプション行使価格近辺での短期売買をすることをお勧めしているのではありません。

個人投資家は、まずは仕組みの理解を!

このオプションのしくみを理解することで、マーケットの動きに戸惑うことなく、自分のスタイルで臨むことができれば良いかと思います。

その日の行使期限をむかえるオプション情報として注目されるマーケットにインパクトを与えるボリュームとしては、ドル・円やユーロ・ドル、ユーロ・円であれば同じ行使価格で10億ドルもしくは10億ユーロ以上、他の通貨ペアであれば5億通貨以上の場合が一般的です。

それより小さい金額であれば無視して結構です。

関連トピック
鶴 泰治

株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

人気の記事

最近人気の記事ランキング

人気ランキング

おすすめの記事

MoneyToday 編集部おすすめの記事

殿堂入り記事

過去に人気を集めた記事をピックアップ

殿堂入り記事

新着記事

最新の記事一覧

新着記事

特集

MoneyTodayおすすめの特集

特集一覧

トピック一覧

トピックから記事をさがす

トピック一覧
TOP