オプションの権利が消失してしまうオプション「バリア系オプション」

「ユーロ急騰の引き金」「1ユーロ=1.15ドルの水準突破はさらなるユーロ相場上昇の引き金になりかねない」などの噂のもとにユーロ・ドル相場は2017年7月下旬に約2年半続いた1ユーロ=1.05~1.15ドルのレンジを遂に上抜けると一気にユーロが買われ、約1ヵ月後の8月下旬には大台の1.20ドルを上昇ブレイクした。

1.15ドルを上抜けると1.20ドルまでのバリア系オプションが大量にトリガー(引き金)し、ユーロ急騰に拍車がかかった。個人投資家にとって、今年の夏場のユーロ相場マーケットコメントは記憶に新しいことと思います。

また、オプション取引情報でたびたびこのトリガー(引き金)という言葉も目にすることと思います。


本特集内の「マーケットの動きに戸惑わないためのオプション取引講座」でバリア系オプションはオプションの権利が消失してしまうオプションとして紹介しました。この権利消失の相場水準のことを「トリガー」と呼びます。

今回は「トリガー」も含めてバリア系オプションにつき、実践を交えて個人投資家向けにできるだけわかりやすく解説したいと思います。


売買権利消失の相場水準「トリガー」

「オプション取引とは特定の期日(行使期日)を迎えたときに一定の為替レート(行使価格)で通貨を売買する権利を取引すること」と本特集内の記事「マーケットの動きに戸惑わないためのオプション取引講座」でも定義を説明しましたが、

上記の2017年7~8月のユーロ・ドル相場にあてはめて解説すると、将来ユーロ高・ドル安に為替相場が進むリスクがあると思ったらユーロを買う権利(ユーロコール)を買っておくと、実際にユーロ相場が上昇したときに実際の相場よりも有利な水準で売買できます。

例えば1ユーロ=1.1000ドルの相場水準のときに行使価格1.1300で1億ドルユーロコールを買ったと仮定し、実際に権利行使日の行使時間に為替水準が1.1320水準であれば、オプションホルダーは自動的に1.1300のユーロを1億ドル買い持ちとなり(ユーロロング)その時の相場水準1.1320で1億ドルユーロを市場で売れば利益が確定できます。

ただし、オプションホルダー(オプション購入者)は購入代金として取引銀行(オプションセラー)に対して購入時に利用料を払わなければいけません。

その場合、オプション購入者は利用料を下げるために、さらなる一定のユーロ高・ドル安になると、売買する権利が消えてしまう条件を受け入れることも多々あります。

この権利消失の相場水準のことを「トリガー」と呼び、上図の2017年7~8月の相場水準でいえば、1ユーロ=1.1600、1.1700、1.1800、1.1900、1.2000が主に該当しました。

行使価格(今回のケースでは1.1300)とトリガーの間隔が狭いほど、利用料引き下げ効果は大きくなります。トリガーは一般的にそう簡単に権利が消失しないような水準に設定されることが多いです。

バリア系オプションの具体的実践事例

(前掲の図を再掲)

一旦、相場がトリガーを超えると、オプションを買っていた投資家は権利消滅(上述でいえば1.1300ドルでユーロロングが消滅する)によって為替リスクを回避する手段を失います。

どういうことなのか具体的に解説すると、例えばこのオプションホルダーは輸入業者で、2017年5月下旬(1ユーロ=1.11ドル台)時点で3ヶ月後の8月31日に輸入代金、1億ユーロの支払いをする(=8月31日に1億ユーロ購入する)ことが決まっていたとします。

そこで、ユーロのレートが上昇し、支払い時点の8月31日のユーロの購入代金が高くなってしまうリスクを想定し、そのリスクを軽減するために、8月31日に1ユーロ=1.1300ドル以上高くなっても、1ユーロ=1.1300ドルで1億ユーロ買うことのできる権利を予め購入します。(8月31日権利期日の3ヶ月オプション)

このとき、オプションホルダーは、2年半も続いているコアレンジを抜け1ユーロ=1.1700ドルに到達することはほぼないと考え、もし1.1700ドルに到達した場合は1ユーロ=1.1300ドルで買える権利は消失することを条件に、権利を手に入れるための手数料を安くしてもらうことにしました。

これが、「権利が消失する水準(トリガー)をセットにしたバリア系オプション取引」です。

しかし、実際のマーケットはその後もユーロの騰勢が続き、2017年7月下旬に1ユーロ=1.1500ドルの節目を突破するとあっという間に1.17ドル台へ(1.1700のトリガー示現)その後も一方通行でユーロが買われ、8月下旬には1.20ドルの節目大台を上抜けしていきました。

このオプションホルダー(輸入業者)は1.1700ドルのトリガーが7月下旬で早々と示現したのでたとえ権利行使日8月31日のユーロ・ドル相場が行使価格1.1300ドル以上でもユーロコール1.1300ドルの権利は消滅しており、1.1300ドルでユーロを買うことはできません。

このオプションホルダーの実際の行動としては、7月下旬の1.1700ドルのトリガーを突破した時点でさらなるユーロ高に備えるために、急いでユーロ買いドル売りに動いたはずです。

このように1.1600~1.2000ドルまでのトリガーをもっていたオプションホルダーはあわててユーロ買い・ドル売りをしたためユーロ買いが加速した大きな要因となりました。

相場がトリガーに近づいてくると「防衛売り」が行われることも

一方、相場がトリガーに近づいてくると、オプションホルダー(プロの銀行ディーラーも含む)は権利消失を避けるためにユーロを売り支える「防戦売り」をすることも多々あります。

よって、相場展開によりまとまった金額のトリガーが近づくと相場は一旦揉み合いとなり、一時的に反落するケースも見られます。

しかし、防戦売りしたオプションホルダーは売った分はどこかで買い戻さなければならなく(ユーロ買戻し)、遅かれ早かれトリガーを突破していくのが一般的です。

逆に買い戻すタイミングもないままトリガーが突破すれば、消滅した行使価格のユーロに加えて手前で防戦売りした分のユーロも買い戻す必要が生じるので、ユーロ買いが一気に加速することに繋がります。

バニラオプションと比較してマーケットインパクトが大きいバリア系オプション

このようにバリア系オプションはバニラオプションと比較してマーケットインパクトは大きく、市場参加者(投機筋や銀行ディーラー)はトリガーをつけにいく動きをするため相場が短期間に一方通行的に動くケースが多くなります。

また、トリガーの手前で「防戦売り」「防戦買い」が大量に出て一時的にもみ合うことも頭に入れて個人投資家は自分のスタイルで取引を行うことが大事です。マーケットコメントで「トリガー」という用語がでてきたら注意してください。

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鶴 泰治

株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

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