JPモルガン・チェース元副社長の パン・ファードン氏の23日発言を見ていくと共に、もし2008年のリーマンショック時にブロックチェーンが普及していたらどうなったのか考えていきたいと思います。

パン・ファードン氏の発言

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米国の金融グループ、JPモルガン・チェース元副社長で、現在はAsia Blockchain Instituteアドバイザーのパン・ファードン氏は「ブロックチェーンは次の金融危機を回避するための鍵となるかもしれない」と発言しました。

ファードン氏によれば金融危機の起こった原因の一つは仲介人を介す金融業界の不透明なシステムであるとされ、そういった部分を解消するブロックチェーンを利用できれば金融危機のリスクを軽減し、低コストでの信用システムを作ることができると考えられています。

ブロックチェーンとは

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 ブロックチェーンとはビットコインなどの仮想通貨の根幹をなすシステムのことで、取引をブロックに格納し承認することで取引の信頼性を担保し、さらにブロック同士をチェーン(鎖)のように繋げていくことによって改ざんするよりもルールを遵守して利用するほうが効果的になるというシステムをいいます。

 仮想通貨の発展と同時に語られることも多く、また通貨的利用のみならず保険や企業情報、そして農業など様々な分野に応用することができると期待されていることから、ブロックチェーンには期待できるという声も多く聞かれます。

2013年から14年にかけて、その国際会議で最大のテーマとなったのがビットコインでした。出席者の誰もが話題にしている。ビットコインは国境を超えて行き来する新しい仮想通貨だ、これは銀行にとってはゆゆしき事態だ、と銀行関係者は皆考えていたようです。  ところが、2015年の会議に出席してみると、突然「ビットコイン」という言葉を一切聞かなくなった。入れ替わるように登場し、飛び交っていたのが「ブロックチェーンはすごい」「この技術は本物だ」といった言葉でした。不思議に思って出席している銀行関係の人たちに聞くと「ビットコインはもう終わったよ」「あんなものは使えない」と口々に言うのです。

引用: www.huffingtonpost.jp

この発言群にも一理あることは確かです。ブロックチェーンの利用可能性はとても高く、より普及の可能性があるのはどちらかと言われればブロックチェーンだといえるでしょう。しかし、ビットコインの中核技術はブロックチェーン技術にあります。ビットコインの信頼性の問題や送金のスピードの問題はおおよそブロックチェーンのこれからの課題と同一です。

まだ発展途上の2つの技術、まだまだ両者を共に見ていく必要がありそうです。

2008年の金融危機とは

リーマンショック

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① 米国第4位の投資銀行であったリーマンブラザーズが破綻。
  ↓
② 住宅バブル崩壊によってサブプライムローンの証券化商品から多大な損失。
  ↓
③ この破綻によって連鎖的に他金融機関も経営危機に。
  ↓
④ 各国政府が公的資金を注入、損失補償など全面的に金融機関をバックアップ。
  ↓
⑤ 経済成長に波及し、成長率はマイナスに転落。デフレ。世界同時不況。株価の暴落

① リーマンブラザーズの破綻

負債総額6130億ドルの史上最大の事例。同様にサブプライムローンを抱えていたベア・スターンズやメリルリンチは他金融機関等に買収されるなどして破綻は逃れることができましたが、当初リーマンブラザーズを買収すると見られていたバンク・オブ・アメリカがメリルリンチ買収に踏み切ったことや負債総額の大きさから売却先が現れなかったことが破綻に至った理由と考えられます。

② サブプライムローン

低所得者向けの住宅ローン。借り入れ当初は低金利ながらも、数年後に高金利になるというシステムで、返済が滞った場合には高金利による回収と住宅売却による回収で解決できるという理屈で運用されていました。

 当時のアメリカでは不動産価格が上昇を続ける、いわゆる住宅バブルの状況でした。金利の上昇タイミングを狙って住宅を売却することで、ローンを一括返済した上で売却益を得られる状況であったことから投機の対象としてバブルが拡大していきました。この住宅価格の上昇によって本来返済が滞る場合においても住宅の担保価値が同時に上昇することから、新たな借入をする自転車操業的な形式で住宅所有を続けることができていました。

 ということは、住宅バブルが崩壊し、不動産価格が下落すると、自転車操業は成り立たなくなります。またサブプライムローンを売却によって返済しようとしていた利用者も住宅の売却のみでは返済ができず自己破産に至るという結果を招きました。

 しかし、これだけでは大手投資銀行の破産という結果には至りません。では、なぜサブプライムローンの破綻が世界的な不況まで引き起こしたのでしょうか。それが証券化というスキームを利用した金融機関の利益創出方法にありました。

証券化スキーム

証券化という手法は、不動産や証券など多様な資産から生まれるキャッシュフローを裏付けとした有価証券を発行し、市場で流通させるスキームのことをいいます。

万が一返済が滞っても損失は保有資産に限定されること、多くの投資家に小口売却することによって容易に資金調達ができることなどのメリットを持ちます。

サブプライムローンは低所得者向けということからも分かるように高リスクの商品でした。つまり、ローンを引き受けるローン会社は貸し倒れのリスクを抱えることになります。そこで、証券化スキームを利用し、損失リスクを抑え、またより多くの投資家へとリスクを分散していくのです。

この証券を引き受けるのがリーマンブラザーズをはじめとする投資銀行でした。ローン証券を一括して買い取りリスクに応じて分類していく手法を使い、サブプライムローンには住宅バブルの影響で貸し倒れも少なかったことから、分類のうち特にリスクの低いローン群には格付け機関からは高い格付けが付けられていました。

さらに、投資銀行は本来AAAにはならないクラスのローン証券についても、他の低リスクの商品などと組み合わせた詰め合わせ商品を作っていくことで格付けを上げていく手法を取りました。
 
この結果、多くのローン証券がAAAという最高評価を得る商品となっていったことで、実際の価値との乖離が進んでいきました。
 そして、住宅バブルが崩壊し、格付け機関がローン証券の格付けを引き下げたことをきっかけに、一斉に証券は売却、買い手がつかず証券の破綻に陥りました。

③ 他金融機関への波及

リーマンブラザーズは当然、他の金融機関とも取引をしています。また、投資銀行という業種の性質上、企業の社債の発行、投資信託の組成などを行っていることから、そういった企業への影響も予想されました。

④ 公的資金注入

政府は経済の安定化のための経済的政策を実行する機関でもあります。経済システムの安定を図り、国民の安定的な生活を保障するという趣旨から本件においてもアメリカ合衆国財務省が救済政策を決定、当時のブッシュ大統領も緊急経済安定化法案に署名しました。

⑤ 成長鈍化、株価暴落

政府が金融システム安定に注力していること、国民の間に金融不安が広まったこと、各投資銀行が持つヘッジファンドが各国の市場に供給していたリスクマネーを引き上げたことなどから株価の暴落、そして経済成長のマイナス転落という問題を引き起こしました。

日経平均株価は12000円台から7000円台へと急落。企業への資金供給も鈍化したことが経済成長のマイナスにも繋がりました。

もし、ブロックチェーンがリーマンショック時に普及していたら…?

低コストでの信頼性の担保

 ⇒低コストでの運営により、リスクの高いスキームを利用しなくても収益をあげられるビジネスモデルになる。(ビジネスモデルの変化を促す)

不動産登記のブロックチェーン管理 

 ⇒誰から誰に所有権が移転したか全て分かるようになる。

証券化スキームの透明化

 ⇒誰が所有する不動産の証券化されたものなのかも分かるようになる。

金融機関同士の取引の透明化

 ⇒一般人であっても取引が透明化され、よくわからない…という不安が解消される。

もし当時の時点でブロックチェーンが普及していれば、そもそも金融機関は証券化やサブプライムローンなどといった高リスクのスキームを利用することなく運営ができていたかもしれません。

 また、利用したとしても不動産の取引が透明化されれば、投機的所有を抑える政策や刑罰などの規定も整備できるかもしれませんし、責任の所在をはっきりさせることができるようになるでしょう。

 また一般の私たちとプロである金融機関の間の情報格差も狭まり、よくわからない不安から株式を売る判断をするということもなくなるかもしれません。

まとめ

JPモルガン元副社長の発言から、過去の金融危機の概要、そしてそこにブロックチェーンがあればどのような違いがあったのか、少し考えてきましたがいかがだったでしょうか。

 今回の記事でも彼自身が現在、Asia Blockchain Instituteのアドバイザーという役職についていることから、ブロックチェーン普及を目指すための好意的な発言と見ることもできますが、実際にブロックチェーンが普及すれば過去の金融危機のような事態も防ぐ余地があるということには変わりはないため、今後のブロックチェーン技術の発展に期待できると考えていいでしょう。

しかし、ブロックチェーン技術にはまだ大きな課題があることも確かです。仮想通貨と共にブロックチェーンの動向もチェックしていくことが大切になっていくでしょう。

参考記事:「ブロックチェーンは次の金融危機を回避するカギ」=JPモルガンの元幹部
(https://jp.cointelegraph.com/news/chinas-xiongan-new-area-signed-mou-with-consensys-for-promoting-blockchain-city)

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