仮想通貨は英語に訳すとCryptocurrency(クリプトカレンシー)と呼ばれます。では、シリコンバレーならぬ「クリプトバレー」があるのはどこだか知っていますか?

答えはスイス連邦共和国、ツーク市というところです。永世中立国として有名なスイスという国がなぜ仮想通貨先進国となっているのか?今回はこの理由について考察していきたいと思います。

[目次]
1. スイスの地理と歴史から見るクリプトバレー化の理由
2. スイスの金融事情から見るクリプトバレー化の理由
3. 会社設立と規制のあり方から見るクリプトバレー化の理由
4. シリコンバレーとの比較から見るスイスのクリプトバレー化の理由
5. ツークがクリプトバレーになった理由
6.まとめ

1. スイスの地理と歴史から見るクリプトバレー化の理由

ヨーロッパの中心国に挟まれる位置

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9

スイス連邦はヨーロッパのドイツ・フランス・イタリアに挟まれた国家で、永世中立国として知られています。首都はベルンで、有名な都市としてはチューリッヒ、ジュネーヴ、バーゼル、ローザンヌなどを擁します。

地理的影響もあり、公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語とロマンシュ語となっており、ヨーロッパの中でも有数の経済国との関わりも持ちやすい地盤が整っていると言えるでしょう。

永世中立国

また、永世中立国として複数の他国による同意の上、自衛を除く戦争をする権利を持たないことから、国際連合関係機関の事務所や赤十字国際委員会、世界貿易機関など多くの事務所がジュネーブに置かれていたり、他国への不干渉性から金融機関に様々なマネーが流入してくるなどのメリットを持ちます。

歴史が産業に与えた影響

スイスが建国されたと言われるのは1291年。その後1648年には現在のドイツを中心とした巨大国家・神聖ローマ帝国から独立。フォンテーヌブローの勅令の影響でユグノー(カルヴァン主義者・プロテスタント)の亡命先になったことをきっかけに時計産業と金融産業の発展につながってきました。

<まとめ①>
ヨーロッパの地理的・経済的中心地へ近いこと・永世中立国としての国家体制が仮想通貨ビジネスの隆盛へとつながったのではないでしょうか?

Photo on Visualhunt.com

2. スイスの金融事情から見るクリプトバレー化の理由

1人あたりGDPはトップクラス

スイスのGDPは6508億ドル(約72.8兆円)で、1人あたりに換算するとおよそ8万ドル(約896万円)で世界有数の国家となっています。

スイスフランは金よりも堅い

ヨーロッパといえば現在はユーロの印象が強いですが、スイスはEU及びEEAへの加盟をしておらずスイスフランを利用し続ける国となっています。これには「スイスフランは金よりも堅い」との言葉からもわかるように、ドル、ユーロ、円、ポンドと並び外貨交換が活発に行われている通貨であることが理由となっています。

これについても永世中立国であることによる預金の潤沢さによって通貨の信頼が担保されていることが理由といえるでしょう。

長い歴史を持つ銀行業

UBSやクレディ・スイス、チューリッヒ生命など長い歴史を誇る多数の金融機関が存するスイス。中でもスイス銀行は秘密主義を徹底したプライベートバンクとして世界情勢に大きく関わってきました。

いわゆるスイス銀行では、匿名で口座を管理することができ強固な守秘義務により保護されていることから世界中の富裕層の資金が集中していると言われ、その額は世界の資金の3分の1とも言われています。北朝鮮の隠し財産やアニメ・漫画などでの資金秘匿のための機関として有名であり、実際にフィリピンのマルコス元大統領やロシアの石油会社社長、ペルーのフジモリ元大統領などの隠し財産が預金されていたことが明らかになっています。

<まとめ②>
ユグノー亡命による金融の発展。長い間培ってきた金融機関のノウハウ、スイスフランの安定性などが新たな金融の形を創っていくといわれる仮想通貨業界の発展を牽引している理由ではないでしょうか?

Photo credit: WolfgangPichler on Visual Hunt / CC BY-NC-SA

3. 会社設立と規制のあり方から見るクリプトバレー化の理由

スイスの金融を監督するFINMA

FINMAとはスイス金融市場監査局のことで、顧客保護と金融システムの保護を目的とする機関。日本における金融庁と同等の役割を担います。

FINMAは世界に先駆けてICOのガイドラインを策定しており、これはICOのトークンの種類によってマネーロンダリング法(日本における資金決済法)か証券法(日本における金融商品取引法)の規定を適用するというものでした。

スイスという国は仮想通貨に対して好意的に、うまく規制をしながら発展させていくスタンスであることがわかりますね。

法人税の優遇措置

世界トップクラスの法人税税率の低さを誇り、また税率に関する条件も少なく簡易に安く企業運営を行うことができるのがスイスなのです。国内ではさらなる税率引き下げの法改正への動きもあり、企業にとっては利益を上げやすい国であることは間違いありません。

例) 日本とスイスにおける法人税による利益の違い

https://www.s-ge.com/sites/default/files/cserver/publication/free/ihb-10-overview-of-the-swiss-tax-system-in-japanese-s-ge-ja.pd

日本の実効法人税率が50%を超えているのに対し、スイスは30%に満たない水準であるのがわかります。他の国々と比べてもスイスの法人税率は低いことがわかります。

ではなぜ、法人税率が低いと企業が集まりやすいのか?それは単純に利益を多く出すためです。世界的企業の多くは税率の低い国(タックスヘイブン)に法人を設立し節税を行っています。納税額を法律の範囲のなかで減らすことにより利益を多く残したい。利益追求を目的とする企業という組織なら当然のことといえるでしょう。

さらにツークは税率が低い

スイスの税率が低いことは述べてきた通りです。しかし、クリプトバレーと言われるツークはスイス国内でも低い水準となっているのです。仮想通貨関連企業のみならず、シーメンスやグレンコアなどの本社もツークに立地しています。

国際会計事務所のKPMGが昨年行った調査によると、ツーク州における企業収益にかかる税率は、普通の企業には15%、特権を持つ企業には8.8%。特権を持つ企業とはツーク州で事業活動を行っていない、または本業以外の事業だけを行っている企業のことで、ホールディング会社などがその例だ。

引用: www.swissinfo.ch

<まとめ③>
スイスという国、特にツークの低い法人税率への魅力と、仮想通貨/ブロックチェーンへのいち早い規制の姿勢がツークのクリプトバレー化の後押しとなっているのではないでしょうか?

Photo credit: Phototravelography on Visualhunt / CC BY

4. シリコンバレーとの比較から見るスイスのクリプトバレー化の理由

シリコンバレーとは

シリコンバレーとは、アメリカ・サンフランシスコの地域の総称であり、半導体の主原料であるシリコンの集まる谷(バレー)から名付けられた地域。第二次世界大戦後からIT産業の中心地として発展し、AppleやGoogle、Facebook、Yahooなどのインターネット関連企業を生んだ地として今も注目されています。

なぜシリコンバレーからITのトップ企業が数多く生まれたのか?

この理由はスタンフォード大学の存在が大きいと言われています。

当初第二次世界大戦が行われていた中、大学教授たちはレーダーを始めとした軍事技術の研究に駆り出されることとなりました。当時スタンフォード大学の教授であったフレデリック・ターマン氏は、軍事技術の研究費のスタンフォード大学の割当てが少ないことに気づき、研究開発力を強化。スタンフォード大学周辺には様々な新技術を核とした企業が誕生するようになり、また如何に新しく効果的な技術を磨くことで国から予算を獲得するかといった競争が生まれるようになったと言われています。こうした精神が受け継がれ、現在のIT中心のシリコンバレーが形作られたと言われています。

つまり、スタンフォード大学と軍事産業の関わりがシリコンバレーという場所を生み、魅力を感じたトップ層が集まってきたことが理由なのです。

(参考:https://youtu.be/ZTC_RxWN_xo)

原材料と研究環境が整っていたことがシリコンバレー発展の理由!

<まとめ④>
IT産業の不可欠な半導体の原材料、ケイ素(シリコン)の産地であったこと、戦後のスタンフォード大学の発展により研究環境と起業精神が高く見られたことがシリコンバレー発展、世界的企業誕生の理由といえます。また、そういった企業が多く集まることによる切磋琢磨がしやすい環境であることが、長きに渡って発展し続けている理由といえるでしょう。

では、スイスのクリプトバレー・ツークはどうでしょうか?

Photo credit: kmoliver on Visualhunt.com / CC BY-NC-ND

5. ツークがクリプトバレーになった理由

ツークはスイス北部にある都市で、クリプトバレーと言われている地域となっています。ブロックチェーン関連企業は600社、時価総額は440億ドル(約4.92兆円)ということが調査によって明らかになっています。

原材料?

半導体とは異なり、仮想通貨関連事業には原材料がありません。(強いて言うならインターネット環境とパソコン、半導体)。そのため、材料の産地という面での理由は考えづらいでしょう。

研究機関?

仮想通貨/ブロックチェーンはインターネット上での価値移動手段です。非中央集権という特徴からも分かる通りどこの国からでもアクセスできるわけです。そのため、研究や実験の設備もいらず、1箇所に集まる必要もありません。そのためこちらの要因も関係ないでしょう。

税率

先程述べたように、スイスという国は比較的税率の低い国として知られています。さらにツークは10~20%という低い法人税率が特徴です。これは企業が集まる理由としては十分と言えるでしょう。

しかし、税率の問題だけでは仮想通貨関連業の企業がツークに集まる理由がわかりません。

環境

ツークにはイーサリアム、リスク、Tezos、カルダノなどの仮想通貨プロジェクト、ビットメインなどのマイニング企業が本社をおいています。

仮想通貨のプロジェクトは開発を行う組織であるため、こういった組織の集まる場所に行けば様々な開発に携わることができますし、より多くの情報をいち早く手に入れることが可能となります。

ツークがクリプトバレーになった理由

やはりツークがクリプトバレーと呼ばれる仮想通貨ビジネスの熱い地域である理由は第一に税率、次に環境にあると言えるでしょう。その背景には永世中立国としての国家体制、ヨーロッパ中央に位置する地理的要因もあると考えられます。

Ⅰ. ツークという土地の法人税の低さ
 ⇒ 多くの企業が進出

Ⅱ. 仮想通貨関連企業が多数進出していた
 ⇒ 追随する形で、起業・進出が進んだ

▲ツークがクリプトバレーになった理由

Photo on VisualHunt

6.まとめ

1. スイスの地理と歴史から見るクリプトバレー化の理由
ヨーロッパの地理的・経済的中心地へ近いこと・永世中立国としての国家体制が仮想通貨ビジネスの隆盛へとつながったのではないでしょうか?

2. スイスの金融事情から見るクリプトバレー化の理由
ユグノー亡命による金融の発展。長い間培ってきた金融機関のノウハウ、スイスフランの安定性など国家の金融への取り組みの姿勢が仮想通貨業界の発展を牽引している理由ではないでしょうか?

3. 会社設立と規制のあり方から見るクリプトバレー化の理由
スイスという国、特にツークの低い法人税率への魅力と、仮想通貨/ブロックチェーンへのいち早い規制の姿勢がツークのクリプトバレー化の後押しとなっているのではないでしょうか?

4. シリコンバレーとの比較から見るスイスのクリプトバレー化の理由
IT産業の不可欠な半導体の原材料、ケイ素(シリコン)の産地であったこと、戦後のスタンフォード大学の発展により研究環境と起業精神が高く見られたことがシリコンバレー発展、世界的企業誕生の理由といえます。また、そういった企業が多く集まることによる切磋琢磨がしやすい環境であることが、長きに渡って発展し続けている理由といえるでしょう。

5. ツークがクリプトバレーになった理由
Ⅰ. ツークという土地の法人税の低さ
 ⇒ 多くの企業が進出

Ⅱ. 仮想通貨関連企業が多数進出していた
 ⇒ 追随する形で、起業・進出が進んだ

関連トピック
MoneyToday編集部

MoneyToday編集部の公式アカウントです。

人気の記事

最近人気の記事ランキング

人気ランキング

おすすめの記事

MoneyToday 編集部おすすめの記事

殿堂入り記事

過去に人気を集めた記事をピックアップ

殿堂入り記事

新着記事

最新の記事一覧

新着記事

特集

MoneyTodayおすすめの特集

特集一覧

トピック一覧

トピックから記事をさがす

トピック一覧
TOP