1. 機関投資家とは

機関投資家とは、投資家のうち、個人で投資を行うのではなく他人から委託された資金を運用・投資する団体のこと。一般にいう機関投資家は法律上の定義はなく、かなり広い範囲のことを指します。

多額の資金を持ち、ノウハウも多く蓄えていることから一度の取引がマーケットに与える影響が大きくなっています。一方で長期的な投資を行うことができるなど市場環境の安定にも寄与している存在でもあります。(後述)

機関投資家として知られるのは、生命保険会社や損害保険会社、信託銀行、年金基金、投資信託などが主。運用によって資産を増加させることや、その過程で手数料徴収を行うことによって利益を上げるビジネスモデルを採っています。

1-1. 適格機関投資家

金融商品取引法上での規定において、機関投資家に近いものはいわゆる「プロ」投資家と呼ばれる適格機関投資家というものがあります。(*2条3項1号)

適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。)

引用: elaws.e-gov.go.jp

※金融商品取引法とは金融商品取引所の適切な運営の確保によって構成な取引と流通の円滑化を図り、公正な価格形成によって国民経済の健全な発展及び投資家保護を目的とする法律です。

個人もなれる適格機関投資家

適格機関投資家は金融庁長官に認可を受けるとなることができます。そのため、金融機関などでなくとも有価証券保有残高10億円以上の法人や個人(※有価証券口座開設から1年以上)も適格機関投資家になることが可能です。

○適格機関投資家の届出を金融庁長官に行った者

適格機関投資家になると何が違う?

通常、有価証券発行に再する募集や売出においては企業情報や財務情報を記載した有価証券届出書、目論見書などを提出交付する必要があります(発行開示規制)。さらに継続的にこれらの情報を開示する必要も出てきます(継続開示規制)。

しかし、これは金融商品取引法の目的の1つである投資家の保護、情報の非対称性を是正するための措置であるため、プロである適格機関投資家には必要がありません。(*その他少数の場合にも私募に該当します。)

そのため、私募といわれる形で適格機関投資家向けの商品が別に販売され、これを購入することができるというメリットが生まれます。

1-2. 特定投資家(適格機関投資家+α)

適格機関投資家を含めたより広い範囲での円滑な取引を図るための制度が特定投資家制度です。

この制度によって適格機関投資家にはあたらないものの、資本金5億円以上の株式会社など一定の条件を満たした企業を特定投資家に指定し、情報格差や広告規制などの投資家保護のための行為規制の適用を省略する範囲を広げることが可能となります。

https://www.nomura.co.jp/guide/system/kinsyouhou/tokutei_toushika.html

2. 機関投資家の効果

多大な資金の流入

仮想通貨業界の市場規模は現在25兆円程度。昨年末の時点でも91兆円という規模です。証券市場が600兆円弱であることからもまだまだ小さい規模であることがわかります。

ある大手生命保険会社の運用資産残高はおおよそ50兆円。他のすべてを合わせると機関投資家が持つ資産は数100兆円といえるでしょう。この一部でも仮想通貨市場に流入すればマーケットに与える影響は多大なものであることがわかります。

売り圧力の増加

大量に保有している者がいる場合、一挙に売ることによって市場に売り圧力を掛けることが可能となるのです。もちろんさらに大量に保有したいと買い注文を入れる場合は価格を上昇させることができます。言ってしまえば大量に保有すればするほど価格を操作することができるというわけです。

こちらについてはクジラ(=機関投資家)の記事でも紹介しています。

3. 機関投資家の資金流入の条件とは

ではなぜ機関投資家は株式や債券での運用は行うのに、仮想通貨市場には参入してこないのでしょうか?

それは、株式や債券の市場に比べ、仮想通貨市場は①仮想通貨自体の信頼リスク、②安定性に欠ける、③流動性が低い、④資産管理のむずかしさといった問題を抱えていることが理由だと考えられます。

① 仮想通貨自体の信頼リスク ⇒ETF組成で解決

ビットコインやイーサリアムなどの有名な仮想通貨ではこういったリスクはあまりありませんが、知名度の低いコインなどでは詐欺の可能性が否定できません。こういった信頼性に関するリスクという問題も忘れてはいけません。

<これがあれば機関投資家も参入!>
・ETFの組成
 仮想通貨ETFの組成を行い、監督局(米国の場合SEC)に承認されれば、分散投資をすることができ、仮に1つの仮想通貨が詐欺だった場合などでもリスクを抑えた投資を行うことができます。

② 市場の安定性に欠ける ⇒先物取引で解決

仮想通貨のイメージ。1つには急激な価格の上下があると思います。うまく波に乗り利益を上げることができれば良いですが、機関投資家の多くは安定的に、また長期的に着実に資産を増加させることを目的としています。こういった場合に投機的要素の強い仮想通貨市場は機関投資家の投資先としては向かないというのが現状と言えるでしょう。

<これがあれば機関投資家も参入!>
・先物取引などのデリバティブ取引
 先物取引は将来の価格を約束して行う取引のことで、価格の上下幅を狭める働きをします。これによって価格が安定すれば機関投資家の参入もありえるでしょう。(※実際に先物取引は開始されていますが、流動性の問題から敬遠傾向にある状況となっています。)

③ 市場の流動性が低い ⇒ETF組成で解決

全体としての市場規模が小さいこともあり、売買が積極的に行われず流動性が著しく低くなってしまうというリスクを抱えます。流動性が低いと、買いたいときに買えず売りたいときに売れないという状況になってしまうことから負債となってしまう可能性が高まるため流動性の高さは大きな条件と言えるでしょう。

<これがあれば機関投資家も参入!>
・ETFの組成
 仮想通貨ETFの組成を行い、監督局(米国の場合SEC)に承認されれば、リスクを抑えながら様々な仮想通貨を購入することができ、仮想通貨市場全体の流動性を高めることができます。

④ 管理が難しい ⇒カストディ業務拡充・信託保全で解決

仮想通貨のイメージ、今年相次いで起こった盗難事件を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?これは仮想通貨の管理の難しさが問題となっていることを示します。仮想通貨はウォレットとよばれる電子的な財布のような場所に保管されますが、インターネット環境に接続されているホットウォレットとそうではないコールドウォレットに大別されます。前者のホットウォレットはハッキングの被害に遭いやすい一方ですぐに資金の出し入れをすることができるというメリットを持ちます。このトレードオフの関係をうまく調整する必要があるため資産管理が難しくなっているのです。

<これがあれば機関投資家も参入!>
・カストディ業務の拡充
 カストディとは投資家に代わって有価証券の管理を行うこと。Coinbaseなどの取引所や銀行などの金融機関が仮想通貨向けのカストディ業務を拡充していけば、機関投資家も管理を任せるかたちで投資に動きやすくなるでしょう。

・信託保全
 盗難に合わないように事前に他の場所へ管理機能を移しておくというのも一つの手です。FX業界などでは義務化されている信託保全とは信託銀行などに資産の所有権を移し管理を委託することで仮に取引所がハッキングされたり破綻した場合であっても、顧客資産の返還を行うことができようにする仕組みです。

4. まとめ

機関投資家の参入は価格の上昇を招くのか、はたまた下落を招くのか。どちらにせよ個人投資家ではなし得なかった多大な影響を及ぼすでしょう。

やはり機関投資家参入には安定的に運用を行うことができる市場になることが必要条件。先物取引やETF組成、カストディや信託保全といったリスクの低減策の拡充が今後のカギになりそうです。

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