本記事では、プロディーラーが実際に取引をする際に注目する経済指標「ロンドンFix」「東京仲値」「シカゴ先物市場」「G7、要人発言」について解説をしていきます。

世界で活躍するプロの指標「ロンドンFix」

ここでは、毎月定期的に発表される各国の経済指標とは別に、プロのディーラーが直接相場を動かす材料として注目している指標を紹介します。まずは、ロンドンFix(ロンドン フィキシングともいいます)です。

ロンドンFixは、世界中の機関投資家が指標にしている

ロンドンFixとは、世界中の機関投資家が指標にしている、各通貨ペアの為替レートのことを言います。東京仲値のグローバル版みたいなものです。

ロンドン時間の16時、日本時間では翌日に替わる深夜0時(冬時間は翌日の深夜1時)に決定されることから、日本では「ロンドン4時為替」とも言われています。日本の取引参加者では、年金を中心とした機関投資家が重要な取引指標にしています。

日本の年金運用(機関投資家)が米国10年債を買う場合

たとえば、日本の年金運用(機関投資家)が米国10年債を買う場合を見てみましょう。債券を購入するために、年金運用のファンドマネージャー(運用担当者)は円を元手に債券相当額の米ドルを買いに行きます。

債券購入に必要な為替を手当てする金額は、購入日のロンドンFixのレートを基準に評価されるため、ロンドンFixのレートで米ドルを用意し(買い)、為替リスクを抑えるのです。

もし、東京時間で為替だけ買い手続きをした場合、ロンドン16時の為替水準が買ったレートよりも下がっていれば評価損となり、大きなリスクを抱えることになってしまいます。ファンドマネージャーからすれば、ロンドンFixのレートよりも安く為替を買えれば収益、高く売れれば収益となります。その逆は損失です。

あらゆる投資家がロンドン時間の16時に向けて為替取引を実行

このように、世界中のファンドマネージャーたちがいろいろな思惑がある中、いろいろな通貨ペアでロンドン時間の16時に向けて為替取引を実行します。

また、その取引情報を持っているロンドン市場の銀行勢も、同じ方向性で同じような取引をしますので、よけい値動きに拍車がかかります。よって、日によっては大量の為替取引が瞬時に行われるため、16時直前から不穏な動きとなり、思わぬ上下変動が見られることもよくあります。

ロンドンFixは、外貨買いの動きになりやすい

一般的に、ロンドンFixは外貨買いの動きになりやすい傾向があります。日本から見れば、ドル/円といったクロス円が円安になるケースが多くなります。

なぜなら、グローバルに見て日本株式や債券は、バブル崩壊後の一貫した日本株の下落傾向および歴史的な円の低金利政策よって、ほかの国の資産と比較して魅力がなくなっているため、円を買う海外のファンドマネージャーのほうが円を元手に外貨を買う日本のファンドマネージャーよりも少ないからです。

このロンドンFixのタイミングをとらえて、レバレッジを上げ超短期売買をする個人投資家も多く、通常ロンドン16時の1~2分前からドル円、クロス円で買いポジションをつくり、ロンドンFixの時間帯で売りさばくような動きもよく見られます。

ただ、日本から見れば外貨買いですが、海外の機関投資家が日本の債券・株式を買う場合は「自国通貨売り・円買い」となります。日によっては、ロンドン16時が近づくにつれ円が買われて逆にドル円、クロス円が落ちていくケースもありますので注意が必要です。

月末営業日のロンドンFixは要注意

また月末営業日のロンドンFixは要注意です。グローバルに機関投資家は、月末にリバランスと言って、ポートフォリオの組み入れ比率を調整します。

日本のファンドマネージャーも同様で、外貨資産がふくらんだ部分は円に戻す動きをします。よって通貨ペア次第では、外貨売り円買いの動きも多くなりますので、月末のロンドンFixだけは、外貨買いと決めつけて取引することはやめたほうが懸命です。

ロンドンFixについてもプロの銀行ディーラーにはどの通貨ペアでどのくらいの量の買い(売り)がグローバルで発注されるという情報が内外機関投資家の為替予約情報をもとに邦銀・外銀の銀行ディーラー同士が事前に情報交換をして把握し、かつ発表前に銀行ディーラー自ら同じ方向のポジションを持つ売買の行動に出ているのが実情です。

そして発表と同時に銀行ディーラーはポジションを手仕舞う(要は損益確定の動き)動きに出ます。よって、確実な情報が入手できない個人投資家が巷の噂だけを聞いて一か八かのロンドンFix跨ぎで勝負することはお勧めしません。あくまでも参考情報及びご自分の取引運営の一助にするくらいに留めておいたほうがいいと思います。

外貨建て投資信託で注目される「東京仲値」

東京仲値とは、東京時間の9時55分に決まる、対顧客取引のベースとなるレートです。ロンドンFix同様、この東京仲値の特性を利用して取引している個人投資家もたくさんいます。

東京仲値が決まる時間は、外貨の買いが集中しやすくなっています。この仲値で日本の輸入企業や海外のファンド、外貨建て投資信託の設定を通じて証券会社や信託銀行が外貨を買ってくるケースが多いので、クロス円で外貨の値が上がりやすくなります。

取引通貨の中心はドル/円で、特に月曜日、5と10日のつく日(五十日)、月末はドル買いの量が多くなりがちです。ロンドンFix同様、東京仲値に近づく手前で少しずつドル買いをし、仲値の決定時間やその直後の値が上がったところで売り抜ける戦略です。個人投資家によく見られる手法であり、レバレッジを上げた超短期売買ですが、意外と利益確保への確実性が高い取引手法です。

月末の東京仲値は注目

特に月末の仲値は注目です。新規外貨建て投資信託の設定が月末に集中していることから、その思惑で月末近くになると思わぬ外貨買いが出てきます。

新規外貨建て投資信託の設定とは、証券会社や投信会社が海外債券や海外株式で構成された商品に投資する新ファンドいわゆる「外貨建て投資信託」のことを指します。

募集期間があり、新規設定金額や販売会社も公表されています。ブルームバーグやロイターなど金融マーケット通信社で確認することができます。

実際の設定金額に対して、最終的にいくらお金が集まっているのかは銀行等プロにしかわかりません。ただ、設定金額やその外貨建ての通貨構成で、だいたいの値動きは個人投資家でも予想することは可能です。

たとえば、アジア株ファンドの新規設定であれば、「円売り・アジア通貨買い」となります。為替取引が行われる設定日には、ファンドを受託している信託銀行のディーラー陣も、募集金額に対する最終入金額を朝確認して、仲値に向け外貨買い(円売り)を進めていきます。

ヘッジファンドの動きを読む『シカゴ先物市場』

プロが毎週注目している数字として、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場しているIMM(国際通貨先物市場)のポジション推移というものがあります。いわゆるシカゴ先物市場と呼ばれているものです。

これは、シカゴ先物市場における、いわゆるヘッジファンドを主体としたグローバルな投機筋の通貨取引のポジション推移を、1週間刻みで示したものを指します。毎週火曜日の取引終了後のポジション枚数がCFTC(米商品先物取引委員会)に報告され、その週の金曜日15時30分(ニューヨーク時間)に公表しているものです。

シカゴ先物市場参加者(シカゴ筋)だけで為替市場全体を動かしているわけではありませんが、世界中の市場参加者がシカゴ先物市場のポジション推移を注目する理由は、単にシカゴ筋の動向を読むだけではなく、これらの指標がマーケット全体の縮図を表していると推測されるためです。

プロが日々行っている為替取引は、スポット取引※と言われるキャッシュ取引が中心のマーケットです。為替市場は債券・株式のように、キャッシュマーケットと同等、もしくはそれ以上のボリュームの先物市場があるわけではありません。

※スポット取引・・・為替の場合、取引が成立したあと2営業日後に決済が行われる。直物(じきもの)取引とも言う。

その中で、プロが個人投資家のようにレバレッジをかけて為替指数取引をする場合は、一般的に先物市場で取引することになります。世界中では、唯一シカゴ先物市場だけが為替取引の先物市場として確立し機能しているため、世界中から注目される市場および公表される数字となっています。

つまり、シカゴ先物市場のポジションの偏りは、マーケット全体、特にヘッジファンドマネージャーを主体とした投機的な取引をする「投機筋」のポジションの偏りをある程度表していると推測されています。

たとえば相場が円安局面にある場合、グローバルに見て円がどれくらい売られているのかを先週の数値と比較したり、過去の数値と比較したりして、今後のポジション運営や相場予測に使用されるのです。

最近は、FX会社が配信する為替情報により、個人投資家にも身近な数値としてとらえられるようになりました。CFTCのホームページにアクセスすれば、直近の数値も公表後すぐに確認できますが、内容をより正確に吟味するには、かなり複雑な計算を必要とします。

この情報は、FX会社などの情報配信で確認することをお勧めします。FX会社による情報発信にはCFTC公表の数値をより正確に通貨毎に統計されてあり、米ドルの持ち高も閲覧することができます。

シカゴ先物市場のポジション状況の見方を解説いたします。投機筋が相場に対して強気の姿勢なのか弱気に傾いているのかを推測できるだけでなく、投機筋のポジションの偏りが大きくふくらむと、そのポジションを決済するときに市場に大きなインパクトを与える可能性が高くなります。

CME通貨先物ポジション(シカゴ推移のレポートイメージ)
見出し編集2017年
(3月7日)
2017年
(2月28日)
カナダドル2922030090
スイスフラン▲10016▲11814
メキシコペソ▲42758▲45783
ポンド▲81437▲70671
▲54700▲50017
ユーロ▲59501▲51164
NZドル▲44252937
豪ドル5097851915

米商品先物取引委員会のデータを元に作成(単位:枚/対米ドルの数値/▲はマイナス)

たとえば、ドル/円相場が円安に向かっているときに、シカゴ筋ヘッジファンドの円ショート(円売りのポジション)が大量に積み上がったと、過去や前週の統計値と比較して判断できたと仮定します。

しかし、何らかの原因でドルが反転下落し、急速に円高に向かえば、ヘッジファンドは損失を回避するために円ショートをいっせいに決済の行動(ドル売り円買い)に出る可能性が高くなります。

ただでさえ、レバレッジをかけ大規模な短期売買で市場の値動きを操作するともいわれるヘッジファンドは、流動性の枯渇した状況では市場に大きなインパクトを与えます。さらなる円高の動きに弾みをつける結果になりかねません。

このようなグローバル投機筋の潜在的なリスクがあることを、シカゴ先物市場のポジションは暗示しています。ただ、計測日が火曜日で、実際その結果がその週の金曜日であるため、その間にポジションの数が変化していることは注意しなければいけません。

市場が注目する「G7」や「要人発言」

「G7」(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)、ロシアを加えた「G8(主要国首脳会談、通称サミット)」、さらに新興国を加えた「G20」などの国際会議では、国際的な政治・金融について話し合われ、こと為替問題にも、言及されることが多くあります。

これら会合は、週末に開催されることが多いことから、閉会後の週明け月曜日の早朝は、特に注目されています。

為替市場に対して予想外の共同声明が発表されると、金曜日のニューヨーククローズとはまったく違う水準でウェリントン市場からスタートし、流動性が薄いマーケットの中、投機筋がロスカットオーダーを狙う値動きの展開となり、思わぬ水準を示現して、東京の朝を迎えることもよくあります。

そのため、個人投資家には、重要経済指標の発表と同様に国際会議の前にポジションは決済し、週末をまたいだポジション運営は極力避けることを強くお勧めします。

FX会社の営業が開始される月曜日の朝7時に予想外の損切りをさせられて、月曜日の午前中、気がつけば金曜日ニューヨーククローズと同水準に戻っている、ということが往々にしてあるからです。

逆に投機筋は本邦FXのスタート時間が月曜日東京時間午前7時ということを熟知しており、敢えて7時前からロスカットを誘導するような動きも最近では度々散見されます。

共同声明やその要人発言を受けて、大きく荒れた月曜日の早朝マーケットが落ち着いてから相場に参入しても、まったく遅くありません。

また、こうした国際会議とは別に、為替相場は各国のちょっとした要人発言によって大きく動くことがありますので、つね日ごろから注意が必要です。

注目すべき要人は、アメリカであればFRB議長・理事、財務長官、日本は財務大臣、財務官および財務省国際局長、欧州ではECB関係者です。

彼らの発言内容がこれまでの流れと変わってきたときは、要注意です。しかし、いつ要人発言が出るかは予想できません。

予言できないからマーケットにインパクトが与えられるのです。だからこそ、いつも損切りオーダーを入れておかねばならないのです。市場がわけもわからず不穏な動きをして、トレンドとは逆方向に動き出し、損切りを巻き込んでさらに加速する。よくあることです。

迅速な情報収集の面において、プロに劣る個人投資家にとって、重要で忘れてはいけないことは、何度も申し上げていますが「値動きについていく」ことです。

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鶴 泰治

株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

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