「ドル/円」チャートは「右側に崖を作る」

日本人が最大の取引参加者である通貨ペア「ドル/円」のチャートは、よく「右側に崖をつくる」と言われています。

これは、一般的には価格が上昇するとき(ドル高円安方向に推移するとき)はゆっくり時間をかけて値を上げる半面、下降するとき(ドル安円高方向に推移するとき)は早いことから、ドル売り・円買いの売りポジションで収益を狙うほうが効率的であり、つまり短時間でより大きな利益を上げられることを示唆しています。

右側に崖を作る要因は「海外金利の魅力」

右側に崖をつくる要因のひとつが、円よりも高金利である海外金利の魅力です。

金利商品である海外債券を購入すべく、年金や生保など日本の機関投資家は外貨を購入します。海外投資家の日本の債券・株式の購入量と比べると、その量は圧倒的に日本の機関投資家のほうが大きくなっています。よって、この局面からドル/円市場を見れば、恒常的にドルは買われていきます。

ゼロ金利に近い低金利政策を長く維持している円の状況から考えればこの資金の流れは20年以上継続的に続いています。それは、日本の機関投資家が、買ったドルの債券をポートフォリオに組み込むと通常満期償還まで保持することによります。

つまり、ドル建ての個々の債券や株式を徐々に購入することは、為替面からすると徐々にドル買いポジションがふくらんでいき、ゆっくりとドル/円の価格上昇を後押しする効果があります(ドルの買い切り玉)。

逆に、海外金利が大きく低下し、円と比較して金利水準の魅力が薄れたときや、何らかの要因で債券や株式の価格自体が下落して、外貨建て証券を保持する投資リスクに見合わないと判断されたときは、機関投資家が保有する多くの債券や株式の売りが一度に集まります。

為替面で見れば大量のドル売り円買いが一度に集中し、比較的短時間で値を大きく下げます(ドルの売り切り玉)。このように、崖を転がるように値が落ちていくため、右側の崖と呼ばれているのです。

実需筋も、右側の崖づくりにかかわってくる

実需筋も、右側の崖づくりにかかわってきます。

外貨を支払う輸入企業は、継続的にドルを買って支払期日に備えるのに対し、ドルを受け取った輸出企業が、ドルをいつ売って円に換えるか(円転)はその企業の自由裁量です。

日本の輸出企業の場合、新規設備投資や給料支払いなど企業活動を行ううえで、母国通貨である円が必要となってくるため、ドルで受け取った販売収益は、円に換える必要があります。

通常、企業ごとに、その時々の実勢レートをもとに設定した「社内レート」と呼ばれる、半期ごとに目標のドル売りレートを定めた「円転レート」を持っています。企業は円転レートより実際のレートが円安であれば、たまったドル売りを実行します。

円高のときは、損切りのように売る場合もあります。結果、輸出企業の行動は、どの企業も円転手法は似通っており、かつ円転水準、そのタイミングも横並びが多いことから、一度に大量のドル売りが集まります。

このようにドル/円の場合、日本の機関投資家、輸入企業、個人投資家がいずれも継続的にドルを買っていくのに比べ、ドルの売り手である日本の輸出企業、機関投資家、または個人投資家のヘッジまたは見切り売りの金額は、まとまって一度に大量に出ます。

これがドル/円に限らず、クロス/円の為替チャートで右側に崖ができやすい大きな理由なのです。

「右側の崖」を考えれば売りのほうが効率的?

「右側の崖」を考えれば売りのほうが効率的?|「ドル/円のチャートに見られる「右側の崖(円高局面は売り回転で攻める)」」の1枚目の画像

アベノミクスによる大胆な金融緩和により2012年秋以降長らく続いたドル高円安トレンド(2012年11月の衆議院解散時1ドル80円くらいの水準から12月に自民党が政権をとるとその後半年も経たないうちに1ドル100円を超え2015年6月には125円後半までドルが買われた)は、2016年1月よりトレンドが変わりました。

世界的なリスクオフムードの流れが進む中で避難通貨としての円にグローバルな買いが集中、年初121円台でスタートしたドル円相場はその年の6月下旬の英国国民投票(Brexit)時には100円を割り込み98円台まで下落しました。

ほんの5ヶ月足らずで約23円も円高となったのです。この2016年上半期のドル安・円高局面で、本邦個人投資家はアベノミクスや日銀(黒田総裁)への政策信奉と、FXの最大の利点である「売りから取引できる」金融商品に慣れていないこともあり、この円高局面でも逆張り(ドル買い)で取引をし、為替水準が落ちる過程で大きな損失を出しました。

日本のこれまでの金融商品である株式、債券、投資信託や不動産は価格が安い時に買い、高くなった時に売って収益を得るという「買いポジション」から取引スタートすることが一般的であるものの、FXは外貨が高いとき(円安)に売って、外貨が安く(円高)なったときに買い戻す「売りポジション」からでも取引できる商品。しかし、多くの個人投資家は「買いから入る」取引スタイルから脱却できずに円高下落相場でも落ちたところを拾い(ドル買い)、戻ったところ(上がったところ)で売る取引スタイルに固執しがちで、往々にして戻り売りするタイミングを逸し、結局さらに落ちたところで強制決済され、大きな損失を出しています。

この円高相場では、上述の「右側の崖」を考えれば売りのほうが効率的であり、リスクが大きい分りターンも大きいという鉄則にもかなっています。円高局面こそ売り先行で回転をきかせ、効率的な短期売買を心がけるべきです。

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鶴 泰治

株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

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